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zoom RSS 原子力発電所の供用期間中検査の対象漏れについて(序)

<<   作成日時 : 2010/11/29 22:50   >>

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 一部の原子力発電所で供用期間中検査(ISI)対象機器のリスト漏れが確認され、原子力安全・保安院の指示により、各社で状況を確認することとなりました。
 本件については小生もかつてのISI担当者として思うところがあるため、2〜3回に分けて書いてみようかと思います。

 今回はまず基本的な部分、「どんな点検なのか」について。

 原子力発電所では、建設時及び定期検査時に、配管・弁・圧力容器等を対象とし、プラントメーカーや電力会社、国、第三者機関の立ち会いによる複数種の検査が行われます。
 以下に、主に配管や容器類の検査について簡単に記載します。(今回の件と直接関係のない検査、および各検査の対象機器や代替検査について書き始めるとキリがないので、あくまで関係のおる検査の概要のみとします。)

・「材料検査」
 配管や弁の材質・熱処理について、JIS規格や設計上の要求を満たしていることを、検査記録により確認します。(電力会社が機器を購入する場合、納入検査の一環として行われます。)
 火力等他の発電所と同仕様の一般品であっても、同一ロット材料の成分分析や熱処理、試験片の破壊試験の成績書が要求されるため、価格が倍以上になってしまうケースもあります。
 (通常、この試験に要する費用は価格に含まれますが、万一、試験結果が要求を満たさなかった場合にはどうなるでしょうか・・・最近、某弁メーカーが検査記録の捏造を行いました。これは、万一、弁製造後に要求を満足しない事が判明した場合、同一ロットの製品全てを不合格品として廃棄することになり、収益や納期上問題があるために記録を捏造してしまったものでしょう。本来であれば、材料試験が終了し合格となった材料を用いていればこのような事はなかったものと思います。)

・「溶接検査」
 配管径や機器の重要度にも依りますが、配管や容器、弁等の溶接箇所について、溶接前の開先形状の、初層溶接時、終層溶接後等のタイミングで事業者が自主検査を行い記録を残すこととなっています。(メーカーは炉規制法に基づき国の検査を受け、事業者は自主検査を実施して記録を残しプロセス型検査である安管審によりその適切性について検査を受けます。)

・「使用前検査(PSI)」
 原子力発電所の建設時や改造時には、その機器の使用前に国の立ち会いの元で各種の検査を実施し、機能に問題がないことの「お墨付き」をもらう事となっています。
 段階によってイ、ロ、ハ、ニ、ホの5項目があります。
 イ項使用前検査
 (止める・冷やす・閉じこめる安全に関わる安全機能を有する機器を対象とした検査)
 ロ項使用前検査
 (主に蒸気タービンを対象とした検査)
 ハ項使用前検査
 (燃料装荷以降に必要な安全設備の機能試験/系統試験)
 ニ項使用前検査
 (原子炉臨界達成時の反応度制御や安全設備の機能確認試験)
 ホ項使用前検査
 (全工事完了時の総合機能/性能確認試験)


・「供用期間中検査(ISI)」
 今回未点検箇所が確認された検査で、使用前検査を受けた機器について10年周期で計画的に同じの検査を行い、その健全性を確認するものです。

 プラント運転開始前に実施するPSIでは、安全に関わる系統(の対象範囲)の全ての溶接部について、外観、寸法検査や非破壊検査、耐圧漏洩検査等を実施しています。
 これに対し、運転開始後の定期検査中に行うISIでは、PSIと同等の条件で検査を行います。
 例えば非破壊検査においては有意な欠陥の有無や(欠陥があれば)その進行状況を確認し記録します。(ISIの要求事項はかつては日本電気協会のJEAC4205にて規定されていましたが、維持基準の導入等の変遷を経て、現在は機械学会のJSME S NA-1で規定されています。)


 しかしながら、PSIとISIでは決定的な違いがあります。

 PSIは全ての対象箇所について検査を行いますが、ISIでは10年の間に全ての(PSIを実施した)対象箇所について検査を行うことまでは法令で要求されていません。
 特に重要な機器については全箇所の検査が求められますが、それ以外の部分については、当該系統・機器の重要度やサイズ(例えば配管径)に応じ、類似箇所のグループから代表箇所の抜き取り方式で検査を行うことが認められています。

 このため、ISIの点検計画を立てる際には、まずPSIを実施した数百に及ぶ対象箇所をリストアップすることから始まります。
 次に、リストアップした箇所を系統の重要度や配管径で各カテゴリのグループに分類し、指針で定められた割合を満足するように各グループ毎に対象箇所を選択し、10年間の計画を立てます。
 その後は定検の都度、実績を反映しながら対象箇所の見直しを掛けていくことになる訳です。

 今回の問題は、初めのリストアップの段階で漏れが生じ、その後の実績確認においてもこれを見付けることが出来なかったものです。
 なぜ抜けてしまったのか・・・安全性に問題はないのか・・・については次回触れたいと思います。



 ところで、共同通信やその配信を受けた地方紙では「溶接検査漏れ」として報道していますが、これは明らかに誤りです。
 各社とも施工時の溶接検査は実施しており、その後の使用前検査においても各種試験により問題のないことは確認しています。
 そもそも、ISIの対象は溶接箇所だけではありませんし。

 いつも思うのですが、共同通信は各社へ配信するという需要な役割を持っているのですから、もう少し取材をきっちりとして、正しい言葉を使って報道すべきと思います。(とくに原子力施設のない地方紙の原子力に関する報道は正確さの観点で問題があることがたまにあるのですが、これは共同通信が原因ではないか・・・と感じています。)


 ではまた。

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