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zoom RSS 原子力稼動率向上への小さな一歩?

<<   作成日時 : 2010/06/16 00:25   >>

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 原子力発電所のトラブル関連のニュースは、大から小まで毎週の様に数多く報道されていますが、最近、その中で小生が「おやっ?」と感じたものがありました。

福島第二原子力発電所1号機の原子炉隔離時冷却系隔離弁不具合に伴うプラント点検停止に係る調査状況およびプラントの起動について
http://www.tepco.co.jp/cc/press/10060901-j.html


 東電さんの福島第二の原子炉隔離時冷却系格納容器内側隔離弁の弁動作不良に伴う点検停止です。
 プレスリリースなどの公表情報では、当該弁を分解点検した結果、弁棒の切損が確認されたとのこと。
 原因は使用時の流体振動により弁棒の異径部に応力が集中して経年的に疲労破壊に至ったものと推定されており、これは弁のトラブルとしては珍しくない事例です。

 小生が興味を惹かれたのはこの部分ではなく、「発電再開までの早さ」です。


 通常、機器に異常が確認され、保安規定に定められた期間内の復旧が不可能あるいは困難と判断された場合、原子炉を止めることになっています。(どちらにせよ今回の弁は格納容器内なので、点検のためには原子炉停止が必須ですが)
 その後、当該機器を点検して調査結果を発表、原因を追求して再発防止対策を検討、原子力安全・保安院と自治体へ報告、対策を実施するとともに必要であれば類似箇所へも水平展開、原子力安全・保安院の確認を経てようやく起動・・・と言うパターンでした。(但し、再循環ポンプのシール部劣化のような消耗品交換のための停止は除く。)

 ところが、プレスリリースを読んだ限りでは、どうやら今回のプロセスは少し違う様に思えます。
 詳細原因追求・再発防止策検討及び最終報告を飛ばし、先に部品を交換して弁を復旧し発電を再開しているのです。


 これは非常に合理的な判断だと思います。

 部品が疲労破壊するまでにはかなり時間がかかっている訳ですから、たとえ同じ部品に交換し復旧したとしても、直ちに再発することはないでしょう。
 とりあえず同じ部品で復旧しておき、原因と対策は原子炉を運転しながら調査すれば良いのです。

 このやり方は稼動率の向上に寄与するのは勿論ですが、実は安全性の向上に繋がりうるものでもあります。

 従来の様に国や自治体への最終報告が起動条件だと、起動を優先するために十分な検討が行われない事にも繋がりかねません。(絶対に有り得ない、とは言い切れないし、起動後も引き続き調査や必要な改善が行われる保証もない。)

 最終報告が起動条件から外れることで、電力会社はある程度余裕を持ってじっくりと原因追求に取り組む事が可能となります。
 また、その過程で明らかになった新たな知見があれば、次回の点検までにそれを反映した改良品を準備するだけのリードタイムも確保可能となります。


 実は国外ではこの手法はかなり以前から取り入れられており、計画外停止期間の短縮に大きく寄与しています。

 数年前の日本原子力技術協会の調査によると、日米の原子力発電所の計画外手動停止日数を比較したところ、日本の日数は1回あたり米国の4〜5倍であり、このうち2倍までは規制側による起動プロセスの不文律が原因である、とのことでした。
 その後も複数の機関から同様に日本の再起動プロセスの問題点が指摘されており、これらの指摘を受けて規制側も変わってきた、ということなのかも知れません。

 今回は東電さんのプレスリリースが詳しかったためにたまたま気付きましたが、実は小生の気付かぬうちに既にこの起動プロセスが通常のルーチンとなっているのかも。
 もしそうなら、気付くのが遅くてごめんなさい。(なお、一応、最近の電力各社のプレスリリースを確認してみましたが、それらしいのは見つけられませんでした。)

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セルフコメント。
低い低いと言われている日本の原子力発電所の稼動率。
しかしその要因は技術的な課題によるものではなく、向上は十分に可能。

一つは硬直化した規制の見直しとシステマティックな監視・起動プロセスの確立。

もう一つは電力会社の状態監視保全のさらなる強化(運転員による巡視点検結果のデータベース化も含む)と品質保証体制の改善。

最後の一つは自治体の役割・権限及び判断基準の明確化。


NUCNUC
2010/06/16 00:55
「経年的に疲労破壊に至ったものと推定」
これが正しい事を前提に論を組み立てていますね。

一般人の私から見ると、破断面の写真すら無いこれを100%信じてよいものと思えません。
あくまでプレスリリースなので詳しくないのは仕方ないですが、
これをもって「合理的な判断」と評するのは危険であるように感じました。
T
2010/09/26 20:15
失礼しました。

破断面の写真、PDFでありますね。
T
2010/09/26 20:19
Tさま

 折損に至るまでに何年もかかっている訳ですし、全く同じものに交換したとしても、いきなり折れるリスクが非常に低いのは理解頂けますよね?
 通常運転においても最低月に1回は作動確認を行っていますし、バックアップするシステムが幾つもあるわけですから、もし仮に再発したとしても、原子炉の安全に直ちに影響が出るわけでもありません。

 このような軽微なトラブルでも「念のため」と称して、例えば破面のエッチングやサンプリング、場合によってはX線回折による元素調査まで実施してから起動シークエンスに入っていたのが従来の日本の原子力業界で、これは世界的に見ても極めて過剰な対応でした。
 この手の(悪しき)慣習が日本の稼働率を低下させる大きな要因となって来たのは事実であり、近年は原技協他の複数の調査により一般にも明らかにされつつあります。


 なお、プラント停止に至る程のトラブルであれば、発電所に詰めている複数名の保安検査官が現物を必ず確認しています。(ちなみに、発電所内は「フリーアクセス」であり、保安検査官がいきなり「現場を見せろ」と言ったら基本的に発電所職員は拒否することはできません。毎朝の所内の会議や不適合委員会への参加も自由となっている模様です。)
 今回は中間報告のみで起動していますが、最終報告ともなれば国には百ページ以上にも及ぶ報告書(各種データを含む)を出すことも珍しくありません。(実際、小生も何日も徹夜して作っていましたから解ります。)
NUCNUC
2010/10/02 15:53

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