「世界は脱原発!」・・・なの?

アクセスカウンタ

zoom RSS 解説:「原発の成績表」

<<   作成日時 : 2010/06/19 02:13   >>

かわいい ブログ気持玉 6 / トラックバック 1 / コメント 1

<理解せぬままの報道、必要とされるメディアリテラシー>
 先週、原子力安全・保安院より原子力発電所の保安活動総合評価(PI/SDP)の試評価結果が公表されました。
 本評価について、電機新聞を除くマスコミ各社は「原発の成績表」と表現しています。(これは誤解を招く表現であり、適切ではない。後述。)

 このためか、本制度に対する市民の反応は、導入前から電気事業者が懸念していた通りとなっている模様です。即ち、この評価制度の経緯やその意味するところを全く理解せぬままに、「原発は危険」と勘違いしたり、また日本の原子力事業者の能力に対して疑問を呈する声が挙がっている点です。
 この手の批判を行う手合いは、恐らく経済産業省からの報告書には全く目を通していないものと推定されます。

 何故ならば、報告書全てを読めばこのような勘違いはまずあり得ませんし、そこまでせずとも、たった30行ほどの経済産業省からのNews Releaseには、下記の評価が明記されているからです。

3.評価結果(詳細は別途)
 我が国の原子力発電所の保安活動は全体として、概ね適切に維持・運用管理されていると評価されており、国際的な水準と比較しても高いレベルで維持されていることを確認。


<日米の制度の比較>
 元々、この評価制度は米国の規制機関(NRC)のReactor Oversite Process(ROP)のような評価方法の日本への導入を目的として検討が始められたものです。

 詳しくはNRCのWeb Siteを見て頂きたいと思いますが、米国の評価制度は原子力発電所の安全性(計画外停止や「止める・冷やす・閉じこめる」の三機能など)に関係する複数の指標(PI)、及び、発電所に常駐するNRC検査官による日常的な観察行動に基づく評価を組み合わせたものです。

 その評価基準は事業者団体であるNEIによって策定されており、故にか評価基準は極めて明確に設定されています。


 一応、日本のPI/SDP評価も、事業者と保安院・JNESが「検査のあり方検討会」で数年にわたる議論を行った上で導入された制度ではあります。
 しかし、PIに関する部分は日米で類似してはいるものの、その他の部分においては大きく異なっています。

<米国ROPの概要>
 米国ではPIによる評価とNRC検査官の日常観察行為に基づく評価を組み合わせ、各発電所の追加検査の要否を定めています。
 発電所が非常に多くの機器の集合体である以上、故障は必ず発生しますし、場合によっては原子炉停止に至るケースもあります。
 NRC検査官はこの個々の故障よりも、むしろそれを引き起こした原因や事業者の復旧対応に着目し、多くの場合これを自ら評価し、また必要に応じてNRCへ報告します。(故に、検査官には極めて高い能力が要求されます)
 PIと日常観察による評価に基づき、発電所への追加検査、あるいは逆に検査の簡略化の判定が行われます。
 なお、これらの結果は発電所ごとにNRCのWeb Siteでも公開されており、誰もが目にすることが出来ます。(ただし、テロの危険性を考慮し、現在は核物質防護に関する評価は公開されていません)

<日本のPI/SDP>
 これに対し、日本のSDP評価制度は極めて粗削りです。
 経済産業省の報告書を読んで頂くと分かりますが、保安規定違反や安全関連トラブルの有無、それどころかどうでも良い「安全上の制限(LCO)逸脱」までもが含まれています。
 また、事業者の自主的な対応の良否を判定するものではなく、「指摘要件となる事象がその評価期間中に判明したか否か」が結果に影響を与えます。
 この点で、米国のROPと日本のPI/SDPは大きく異なっています。
 ROPは「成績表」と言っても良いものと思いますが、SDPは明らかに「成績表」ではないでしょう。

<昔の問題が今の評価に影響を与えるのはおかしい>
 非常に分かりやすい一例として、東京電力さんの排水管誤接続問題が挙げられます。
 報告書を読んでいただくと分かりますが、福島第一・第二は「配管誤接続により、ごく微量の放射性物質をそうとは気付かずに流していた」ことが判明したことから、「追加検査が必要」との評価を得るに至っています。(添付資料7参照)

 福島第一・第二は、放射性物質の放出基準が現在ほど明確に定められていない時期に建設されました。
 昔は全般的にトリチウムに関する認識が甘く(→だって人体への影響があるようなレベルでは全くないのだもの・・・)、それが結果として誤接続に繋がったものです。
 確かに「現在の基準から見ると」当時のこの設計・施工は誉められたものではありませんが、発見後、彼らは類似箇所の調査を行い、根本原因分析と再発防止策をとっています。
 保安院はこれに対して継続して再発防止策をとっているか否かを確認するために、「追加検査が必要」としているわけです。そしてこれは今回のSDPによる評価とは関係なく、元々当該電力に対して実施する予定だった追加検査を纏めただけのものでしかありません。


 冒頭に記した通り、マスコミは「原発の成績」との表現を好んで使っていますが、別に「現在の安全面に問題がある」「成績が悪い」と評価されている訳ではないのですから、これは的外れもいいところだと思います。


<トップクラスの中で評価するための苦肉の策?>
 ところで、日本の原子力発電所に対して米国と同様に評価を行うと、PIでは余程のことがない限り全ての発電所がオールグリーンになってしまいます。(実際、添付資料6の最終ページでは殆どのユニットが「安全運転上の問題なし」と評価されている)

 また、今の日本の制度では、米国のような合理的な判断基準や検査官の力量に基づく日常評価は、まだ困難であると思います。

 以上の二点から、保安検査結果等の既存の制度を流用しての「やりやすい・差別化を図りやすい」SDPを導入したものと思います。

 学校に例えると、「全体的に成績が良く、他校と同じテストでは殆ど100点ばかりの学校において、さらなる評価を行うために、別の視点でも生徒たちを見ている」・・・とでも考えれば宜しいと思います。



<「総合評価」は必要か>
 ところで、小生個人としては、PIとSDPを「総合評価」として一つに纏める必要性が全く感じられないでいます。
 元々全く別のものなのですから、PIはPI、SDPはSDPでそれぞれ評価して、そこで終わりとすれば良いのではないでしょうか・・・・
 また、もし将来的に米国のROPのような合理的なシステムの導入を目指すのであれば、中途半端なSDPの試評価などさっさと止めてしまい、規格策定への積極的な働きかけや検査官のスキルアップに注力した方が良いと思います。(実は、既存の検査や評価の結果を纏めただけであるSDPについて、小生はその存在価値に疑問を感じています。)



参考
Regulatory Assessment Performance Indicator Guideline
http://www.nrc.gov/NRR/OVERSIGHT/nei_9902rev5.pdf

Reactor Oversight Process (ROP)
http://www.nrc.gov/NRR/OVERSIGHT/ASSESS/index.html

Inspection Procedures & Performance Indicators by ROP Cornerstone
http://www.nrc.gov/NRR/OVERSIGHT/ASSESS/cornerstone.html

原子力発電所の保安活動総合評価(試行)の実施結果の公表について
http://www.meti.go.jp/press/20100614002/20100614002.pdf


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 6
かわいい かわいい かわいい
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
ここは酷いカッター訓練ですね
浜名湖の事故。完全に安全管理上の問題だな 最初報道を聞いたときにライフジャケット来てるだろうから無事かなと思ったら ボートの下に潜り込んでいた子が後から発見されるという惨事に なんか2chの反応を見ているとカッター訓練への反発があるようだ 大の大人でも悶絶するとか海の男になるためのスパルタ特訓のやつなのに 中1とか小学生とかにさせるのって何なの、という 危険なカッター訓練っっ!ヽ(`・ω・´)ノこんなもん止めちまえっ - 華だらけ 花畑華で〜す&#9825; - Yahoo!ブ... ...続きを見る
障害報告@webry
2010/06/19 20:51

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
祝 レベル7
一番じゃなきゃ 駄目なんですか?
おもしろい
2011/04/12 16:13

コメントする help

ニックネーム
本 文
解説:「原発の成績表」 「世界は脱原発!」・・・なの?/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる