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zoom RSS 原子力における安全文化とは

<<   作成日時 : 2010/06/06 09:31   >>

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 先月、5月はチェルノブイル事故を契機として始まった「原子力エネルギー安全月間」でした。
 丁度私も中国電力の島根の機器点検周期に関する報告書を読み終えたところでもあり、今回の話題は「安全文化(セーフティカルチャー)」です。


 この「安全文化」という言葉。今でこそ広く使われるようになりましたが、元はチェルノブイル事故に関するIAEAの報告書(最終版はINSAG-7)の中で言及された概念です。

 これはなかなか掴み辛い概念であり、小生自身も何なのか完全に理解しているわけではないのですが、実は設備におけるハード面のフェイルセーフ/フールプルーフ機能以上に原子力には重要なものです。



 原発反対派の方は、原発反対の理由としてチェルノブイル事故を良く引き合いに出します。
 「日本の原発でチェルノブイルのような大事故が起こったらどうするのか」という論調ですね。

 これに対し、原子力に関し多少なりとも知識のある方は、チェルノブイル事故を語る際、しばしば「そもそも黒鉛減速炉と軽水炉は構造が全く異なるのだから、比べること自体が意味がない」と語ります。

 ハード面のみに着目すると確かにこれは正しい表現です。

 炉型が全く異なるため、軽水炉では出力上昇に伴うボイド効果で反応度が正になることはありません。
 制御棒の挿入に伴い正の反応度が付加されることもありませんし、駆動速度も大きく異なります。
 軽水炉では可燃物を減速材として炉心に使ったりしていませんから、万一炉心溶融などのシビアアクシデントが発生しても、いつまでも燃え続けることはありません。
 また、万一の原子炉周辺部での事故時に外部への放射性物質の放出を抑えるための格納容器もあります。

 ・・・これらの根本的な構造の違いから、チェルノブイル事故が日本の軽水炉では起こりようがないことは明白なわけです。(自動車が空で船と接触事故を起こすくらい「あり得ない」事故)

 小生の原子力に関する知識はゴミのようなものですが、それでも「炉内に落ちた針金でチェルノブイルの一歩手前」などの表現を読むと、「またバカなことを・・・」と苦笑してしまいます。


 しかしながら、「だから日本の原子力は安全だ」と結論付けてしまうのは短絡的であり、また危険な考えだと感じます。
 確かに軽水炉は構造上、「チェルノブイルクラスの事故は起こり得ない」のですが、放射性物質を内包している以上、外部へ放出のリスクを(非常に小さいとは言え)抱えているのは事実です。

 そもそも、RBMK型のチェルノブイル発電所であっても、(構造上の欠陥はあったにせよ)運転に際して定められたルールを守っていれば大事故は起こりませんでした。

 しかし、発電所員がこの定められたルールから逸脱して運転してしまったことが事故に繋がりました。
 また、旧ソ連では、事故に繋がりうるRBMK型の欠陥が事故以前から何回も確認され、改善すべきとされていたにも拘わらず、放置されていました。

 これらの背後要因として、INSAGでは、ソ連全体に蔓延していた安全軽視の風潮、つまり「安全文化の劣化」を挙げ、これを事故の最大の原因としています。

 機器の構造上の問題や運転員の意識、教育・・・と言った個々の原因を挙げるのではなく、その大元が「安全軽視の風潮にあった」としたわけで、報告書は極めて画期的であったと小生は感じています。(初めて読んだときは正直、戸惑いましたが)



 どれほど安全性の高い機器やルール・品質保証体制を作っても、それらを適切に扱い、また保守していくのは「人間の意識」です。

 JCO臨界事故では、設備もルールも安全性を考慮したものでしたが、組織が安全性を軽視し、必要な教育を怠ったことが段階的な手順の劣化を招き、最終的に事故に繋がりました。

 そして、先般の中国電力島根における不適切な点検周期管理の問題。
 自ら定めた点検周期を守れず、フォローもされていなかった点で品質保証上の問題が指摘されていますが、根本原因分析においては、やはり背後要因として「組織としての安全文化(「報告する文化」並びに「問いかける姿勢」)」の不足が挙げられています。(根本原因分析の結果は報告書の添付ー14参照)

 現場サイドでは「先送りしても技術的な問題はない」と判断して点検を先送りにしたものと思われますが、その情報が社内の必要な部課の間で共有されていなかったことは問題です。
 また、これを見つけることが出来なかった社内の監査部門の能力にも疑問を感じます。

 平成14年のPCVL/T偽装・自主点検記録虚偽記載等を受けて制定された民間規格、JEAC4111(原子力発電所における安全のための品質保証規程)。既に初版の発行から6年も経過しているのに、この後に及んでこの規程がまだ浸透していなかったわけで・・・(しかも、今後の定検周期延長のベースとなる重要なデータなのに)


 この島根の件は直ちに事故に結びつくようなものではありませんが、安全文化の劣化は段階を追って徐々に進行するもの。
 今後、しっかりとした体制の再構築が必要と思います。



参考


島根原子力発電所の点検不備に係る調査報告書(最終)の提出について
http://www.energia.co.jp/atom/press10/p100603-1.html

IAEA INSAG-7 "The Chernobyl Accident:Updating of INSAG-1"
http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/Pub913e_web.pdf

IAEA INSAG-4 "Safety Culture"
http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/Pub882_web.pdf

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