「世界は脱原発!」・・・なの?

アクセスカウンタ

zoom RSS ドイツは自然エネルギー!・・・なの?(続)

<<   作成日時 : 2009/07/16 02:37   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 45 / トラックバック 0 / コメント 8

 さて、前回に引き続き、欧州で自然エネルギーの大量導入により顕在化してきた課題について記します。

5.火力によるバックアップには限界も

 自然エネルギーの出力変動が火力発電等の既存の発電設備によるバックアップの可能な範囲内である場合にはあまり問題はないのですが、欧州では、自然エネルギーの発電設備容量の増加に伴い、既存設備では対処不能な状況が発生しています。

(1)英国の事情(風力増設は火力発電所とセット?)

 英国では北海油田の産油量低下もあり、洋上風力発電設備が次々と建設されています。
 今後もこの建設は続く見通しですが、これに伴いバックアップの火力発電設備の調整力が不足しつつあることについては、日本のマスコミは殆ど殆ど報道していません。

 最近は風力発電所の増設に併せて新たな火力発電所を建設する必要性が英国内でも指摘され始めています。
 ドイツは元々火力発電が中心で、しかも他の複数の国と陸続き。自然エネルギーの導入に適した環境にありました。
 しかし、英国は日本と同様、島国です。欧州本土との連系線はあるものの十分ではなく、風力発電の不安定性の顕在化も早いものと思われます。

(2)ドイツの事情(供給過多で火力を運転)

 一方、ドイツでは自然エネルギーの大幅導入に伴い、「需要が低い時期の過剰な発電」が頻発するようになっています。
 ドイツでは自然エネルギーの電力を優先的に使用することとしていますが、最近は深夜に風力等の自然エネルギーからの供給電力が需要を上回る事象が多発しているのです。
 このような過供給を連系線を通じて計画外潮流として域外へ供給できる(逃がすことの出来る)範囲であればまだ良いのですが、その為には現状の連系線では能力が十分ではありません。
 連系線に大電力が流れた場合(送電線混雑)には、最悪、送電線の損傷・大規模停電と言った事態にもなりかねないのです。(例えば2003年のイタリア大停電。全廃した原子力発電の代替発電の導入が進まず、電力輸入の増加により国際連系線への負荷が増大したことが原因でした。)

 供給過多による送電線混雑には送電切替や潮流制限で対応することになるわけですが、送電切替を行うと、送電先(需要側)への供給が抑制されることになります。
 ドイツではこの不足分を補うために再給電指令を発動し、火力発電所等の他電源を運転して不足分を補うことまで行われています。
 この再給電指令の発動回数は自然エネルギーの増大に伴い年々増加しています。ドイツ最大のTSO(系統運用者)であるE.ON Netzの管内では、2007年時点で113日間も再給電指令が発動されていました。



 要するに、風力発電はその電力が足りない場合だけでなく、多すぎる場合にも(再給電指令により)火力発電のお世話になる場合がありうる・・・・ということです。


6.自然エネルギー対策としての連系線・送電網の強化


 連系線の容量が不足しているのであれば解消すれば良い・・・と言うわけで、潮流制限の予防策としては連系線の強化が挙げられます。
 ドイツでは今後の更なる風力発電導入や南部の原子力発電所廃止の計画もあり、早急な送電網の強化が必要とされています。しかし、実際には地域の反対運動によって遅々として進んでいない状態です。
 結局、「風力発電側にも出力を抑制する機能をつけてもらおう」ということで、今年初めの改正再生エネルギー法では、出力100kW以上の再生可能エネルギー発電には遠方制御による出力抑制機能を持たせることが義務づけられました。
 また、5月には、送電線建設許認可の迅速化や地中送電線の建設に関する法案が連邦議会(下院)で可決されました。
 この地中送電線の建設コストは各TSOの送電料金へ転嫁されることになっており、最終的には電気料金の上昇として需要家に降り懸かることになります。
(勿論、火力も原子力も送電線は必要です(笑)が、自然エネルギーは出力が不安定故に、余裕を持った送電網の整備が求められます。)


7.日本はドイツになれるのか

 環境NPOがよく主張する「日本もドイツの様に自然エネルギーを大量導入すべき」との意見に対し、小生は電力の安定供給に関与する者として違和感を感じています。

 忘れてはならないのは、日本には欧州のような国家間連系線が存在しないことです。

 ドイツは国家間連系線を通じて余剰電力を計画外潮流として国外へ逃がすことが(ある程度は)出来ますが、日本では狭い国内で何とかせねばなりません。国際連系線が全く存在しないわけですから、前述の英国よりも厳しい状況と言えましょう。
 国際連系線の存在しない日本と、「全体として電源のベストミックスが図られていればよい」欧州の一部であるドイツ。これら二者を同列に扱うこと自体が、そもそもナンセンスな事だと思います。

 日本でドイツと同程度まで自然エネルギーを導入(仮に可能だとして)した場合、需給バランスをとるためにはドイツ以上の送電抑制をする必要があるでしょう。
 既にスペインでは、給電指令所からの遠隔操作で風力発電の出力抑制を行っています。しかし、これは稼動率の低下、つまり発電単価の上昇にも繋がりますから、資本力の小さいPPSにとっては大きなダメージとなります。


8.まとめ 国は責任ある政策立案と国民への説明を

 今回は自然エネルギーの中でも特に今後日本でも議論が行われるであろう風力に着目し、大量導入による問題点に触れました。
 欧州のように風況が比較的安定し、また国家間、エリア間が連系線で接続されている様な場所でも、自然エネルギーの導入による問題点が顕在化しつつあるのが現実です。

 日本でも福田ビジョンや温暖化ガス削減中期目標で自然エネルギーの導入が加速しつつあります。今のところ、何故か家庭用太陽光発電ばかりが注目されていますが、今後は風力発電等についても導入拡大に向けた議論が進むことになるでしょう。(そうでないとおかしいと思います。)

 しかし、導入に伴う系統側の対策について(技術面・経済面の両方で)きちんとした議論がされていないのが気にかかります。

 自然エネルギーの大量導入に伴う蓄電池の設置や送電網・連系線の強化など、必要な費用は誰が負担するのでしょうか?
 日本の温室効果ガス削減中期目標に対応した電力網の整備には6兆〜10兆円かかるとの試算もあります。

 原子力行政もそうですが、「国が決めたからあとは電力業界が対応しろ」は、いい加減止めて頂きたいものです。
 「国策」なのであれば、しっかりと制度設計を行うとともに、きちんと全面に立って国民とのインターフェイスの役割、説明責任を果たして欲しいです。




 小生は自然エネルギーを否定しているわけではありません。
 むしろ、日本の既存の電力網の限界までは自然エネルギーを導入すべきと考えています。
 流石に太陽光発電設備を自宅に付けてはいませんが(古い家なので、設置費用回収前に家の寿命が尽きてしまう)、反原発・自然エネ推進派の全ての皆さんと同様、僅かですが風力発電に出資していますし、グリーン電力基金へも毎月幾らか出しています。

 ただ、最近の異常なエコブームを見るにつけ、自然エネルギーへの過剰な期待は禁物であり、また日本がドイツのように自然エネルギーを大量に導入するのは困難である、と言いたいのです。

 「自然エネルギーで全ての電力を賄う」のは壮大な夢ですが、現実問題として技術面(及び価格面)で驚異的なブレイクスルーが幾つもない限り不可能であり、当面は主に火力による需給バランスの調整が必要です。
 リスク分散のために火力も複数の化石燃料を用いるべきであり、また、供給と価格の安定のためのベース電源として(あまり前面に出したくないのですが、ついでに書けば二酸化炭素削減のためにも)原子力も必要なのです。



参考資料

1 電気評論2009.6「電力自由化環境における電力システムの課題と展望」東京大学 横山明彦教授
2 エネルギーフォーラム2009.5「欧米電力によるカンファレンス」(「再生可能エネルギー導入でのハードル」)圓尾雅側氏
3 エネルギーフォーラム2009.5「欧州送電網に見る新エネ大量導入の課題と打開策」海外電力調査会 福田権崇氏
4 電気新聞2009.5.14「海外潮流 独下院、送電線の増強法案可決」海外電力調査会 伊勢公人氏
5 電気新聞2009.5.29「『出力変動』調整に苦心 風力大量導入系統安定化策で欧州調査 エネ庁が報告書」

その他



テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 45
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス
かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい
驚いた 驚いた 驚いた 驚いた
面白い 面白い 面白い
ガッツ(がんばれ!)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
 こんばんは。
 我国は狭い上に、電力会社が各エリア内の電力供給責任を持つ、と言ふ業務形態を取っていますから、尚のこと自然エネルギーの普及は面倒ですよね。
 結果として、電力会社は自社管轄内の送電網強化に集中する(←これが我国で停電が極端に少ない理由の一つだと思いますので、悪いことだとは思いませんが)一方で、管轄外には無関心。
 電力間の連系線が細かったり、また、太くても(自社内で需給バランスを取ろうとするのが基本なので)十分に活用されなかったり。

 おまけに、西と東で周波数まで違いますから・・・
あぁさぁ
2009/07/18 00:16
> 我国は狭い上に、電力会社が各エリア内の電力供給責任を
>持つ、と言ふ業務形態を取っていますから、尚のこと自然エ
>ネルギーの普及は面倒ですよね。

 確かにそうですね! 各電力が自社管轄区域内での安定性を考慮するが故に、風力発電の導入が進まない、というのは、我国の特色かも。連系線を活用できれば、青森や北海道で風力発電がもっと伸びると思います。
 全電力会社を一つの企業に改変する、といった大英断があれば・・・

 ところで、ここ数年、欧州での電力事情は大きく変わってきているように思います。「ドイツはフランスから電力を輸入」・・もそうですが、既に単純にそうとは言い切れない状況かな・・と。
 自然エネルギー増加に伴い、国家間の電力輸出入も活発化しているようで、「欧州全体としてベストミックス」「欧州全体として需給バランス調整」の方向にどんどん進んでいます。(フランスなんて、最近はストライキで原発が運転できず、不足分電力を国外からの輸入で補ったりしています。)


NUCNUC
2009/07/20 01:10
 しかし、ドイツって面白い国ですね。
 世論調査では相変わらず「脱・原発」を支持。しかし、国民は「ドイツの原子力発電は安全」だと思っている・・・
 実のところ、ドイツは規制が地方(州)ごとにバラバラで、原子力安全に関する規制は欧州の他の国と比較して激甘、時代遅れ。「それで大丈夫なの?」と他国から心配されていたりもするのですが。(笑)

 海外の原子力関連雑誌によると、「政策が脱原発前提のため、改善に向けた努力を怠ってきた」ことが原因だそうで。
NUCNUC
2009/07/20 01:21
確かに現状では自然エネルギーの需給には不安定性があるでしょう。
しかしながら大容量の蓄電所と最新のコンピューターによる
決め細かな需給の制御によるスマートグリッドを使えば、
不安定性をかなり克服できるのではないでしょうか。
ちなみに私は原子力はCO2を出さない電源のひとつとしてこれからも
新興国や老大国を中心に増設していくべきだと思います。
ただし日本では電力自体が余っているのであまり増やさなくてもよ
と思っています。
polar bear
2009/11/04 13:43
polar bear様
 現時点での問題は、まだ蓄電池の効率が低く、価格も高いことですね。
 欧州のようにエリアが広く変動を吸収しやすい地域においても、風力の大量導入による系統不安定が既存の送電網では吸収しきれないところまで来ており、最近はついに高出力の風力発電所への蓄電池の設置を義務付けた地域もあります。
 しかしながら効率の低さと価格から全ての電力を貯留することは経済的にペイしないため不可能で、短時間での変動分の調整用にしか使えていないのが実態。
 科学技術が目覚しく進歩しているのは確かなのですが、それが今後社会の電力システムの中に取り込まれるには、やはりある程度の時間と投資が必要なのではないかな・・・と感じています。
 いわゆるスマートグリッドやスマートメーターには小生も非常に期待しているのですが、日本では2030年ごろの実用化を目指しているとか。
 電気の余っている時間帯には価格を引き下げると共に「余っているので使ってください」と各家庭に連絡し、逆に足りないときには価格を引き上げると共に系統上の電池や各家庭の電気自動車から供給する・・・という構想もあるそうで、なかなか面白いと思っています。
nucnuc
2009/11/19 23:44
こんにちは。
 北欧(ノルドプール)では需給バランスも考慮して電力取引が行われているわけですが、ついにネガティブプライスが導入されたとか・・・
 風力による余剰電力のマイナス価格(つまりは、電気を使って電力会社からお金をもらう)が発生しているそうで、なかなか面白い手法だと思いました。
 スマートメーターの導入で、家庭でも「今、電気がマイナス価格なので是非買ってください」となるのでしょうか。(むしろ、V2Gで電気自動車に充電かな?)

 スマートグリッド/スマートメーターの問題は、「だれが費用を負担するのか」でしょうね。
あぁさぁ
2009/11/22 08:22
初めてのコメントです。要するに自然エネルギィーは電力供給が不安定な為に、環境負荷も、多少は掛かると言う事でしょう。要は、蓄電システムの登場を待って居ると言う事です。・・・・・我々のグループでは、既に一般住宅用・小規模店舗(コンビニクラス・50KW未満)〜1000KW規模の蓄電システムが完成しています。そのシステムの大量生産のスタートは2010年4月です。このシステムが世の中に大量に出回る事により、このコメントコーナーは違う発展の道を歩む事でしょう。今年から温暖化事情が大幅に激変する事をお約束します。
隅田川花火大会
2010/01/05 02:44
隅田川花火大会様
 少し前に某大手電機メーカーの家庭用蓄電池の販売開始のニュースが業界紙に出ていましたが、そちらの関係の方でしょうか。
 自然エネルギーの不安定な部分はある程度解消できると思いますので、非常に期待しています。(効率低下はあるかも知れませんが、使い方によっては負荷平準化にも寄与することになりますし)
 やはり一番の問題点は、設置箇所(例えば日本の全ての住宅に太陽電池をつけても、10%に満たない)ことと、導入価格でしょうね。
NUCNUC
2010/01/10 09:22

コメントする help

ニックネーム
本 文
ドイツは自然エネルギー!・・・なの?(続) 「世界は脱原発!」・・・なの?/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる